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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)7号 判決 1968年7月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

本件記録によれば、原審の第七回口頭弁論期日(昭和三八年六月二八日)において、上告人(原告、控訴人)代理人は、所論の主張を撤回する旨を述べていることが認められるから、その旨を摘示している原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい

同第二点について。

原判決の確定した事実は、その挙示によつて肯認することができるところ、右によると本件和解契約は、訴外共栄産業株式会社が本件土地建物を上告人から代物弁済によつてその所有権を取得したかどうか、換言すれば、上告人と同訴外会社との間に本件土地建物の所有権の帰属について争いがあり、その結果、この争いを止めるため、上告人が本件土地建物の所有権が被上告人にあることを認めるとともに、被上告人は上告人に対し明渡しを猶予することとして成立したというのである。したがつて、上告人と同訴外会社との間でされた本件代物弁済契約の効力に関する争いは、本件和解によつてこれを止めることを約したものというべきであり、本件代物弁済契約の効力自体が争いの目的たる事項に該当するといえるから、この点について和解当事者は錯誤を理由としてその無効を主張しえないものと解するのが相当であり、これと同旨に出た原判決の判断は正当である。

原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。

同第三点および第四点について。

原判決挙示の証拠関係によれば、本件和解にもとづいて強制執行をしない旨を信じたため本件和解に応じた点に錯誤があるとの主張事実および本件和解成立の日から六箇月以内に本件土地建物を金五〇万円で買い戻す約定が成立したと信じて本件和解に応じた点に錯誤があるとの主張事実はいずれも認めがたく、とくに本件土地建物の買戻しに関しては本件和解外に別個に解決することとした旨の原判決の事実判断は、当審としても、これを正当として肯認することができる。

原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・判断、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。

なお、上告理由書提出期間経過後に提出された上告理由については、判断しない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

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